同じ遺伝子を持つ幼虫から働き蜂と形態・機能の異なる女王蜂になるのはどうして?

同じ遺伝子を持つ幼虫から働き蜂と形態・機能の異なる女王蜂になるのはどうして?

遺伝子は、からだを構成するタンパク質の設計図といわれますが、蜂の幼虫の段階で差はありません。

働き蜂になる幼虫を、女王蜂を育てる王台の幼虫と入れ替えても女王蜂になることが報告されています。(図1参照)

このように遺伝子に違いがない幼虫なのに、ローヤルゼリーを食べ続けると、働き蜂にならずに女王蜂に代わるのはなぜでしょうか? 

これについて、長年研究者が研究課題として取り組んできました。

・2006年に「セイヨウミツバチ(アピス・メリフェラ)」の遺伝子が解析されました 

・2008年学術雑誌サイエンスに「遺伝子の修飾(メチル化)を抑えることで、女王蜂になり、働き蜂になることが阻止できる」という論文が掲載されました。(図2参照)

※原題訳「DNAメチル化酵素Dnmt3の発現を孵化したばかりの幼虫で作用を遮断することで、個体の大多数において卵巣が完全に発達した女王蜂として出現することを明らかにした」

 

◆Dnmt3とは?

DNAのメチル化により、遺伝子発現を抑制するDNA脱メチル基転移酵素(Dnmt:DNA methyltransferase)のひとつ。

 

・2011年にミツバチの形態分化の詳細が明らかにされました。

ローヤルゼリーの女王蜂化作用に関する研究はその後、現在まで複数報告されています。

 

このように、遺伝子的研究がかなり進んだ結果、女王蜂になる要因は遺伝子を変えないエピジェネティックスにあることがわかってきつつあります。

 

◆エピジェネティックスとは?

DNA(遺伝子)の塩基配列(設計図の記載順序を示したもの)を変えずに、その読み取り方を変化させることにより、細胞が遺伝子の働きを制御する仕組みまたはそれを研究する学問のことです。からだのDNAはメチル化、アセチル化などの飾り(修飾という)を付けることで、読み取らせる部分のオン・オフを変えています。