コンドロイチン硫酸とヒアルロン酸は、アルカリホスファターゼの直接阻害を介して、軟骨形成細胞株ATDC5の石灰化を抑制する

概要

成長の過程においては、成長板の軟骨細胞が軟骨内石灰化と呼ばれる分化プロセス(増殖、成熟、肥大)を経て最終的に石灰化軟骨細胞に変換されて骨形成するのに対し、関節軟骨に存在する軟骨細胞のほとんどは、この分化が行われません。しかし、変形性関節症(OA)患者の肥大軟骨細胞においては、関節軟骨の異所性石灰化が誘導され、軟骨変性を引き起こすことがわかっています。
コンドロイチン硫酸(CS)は、軟骨細胞によって生成される硫酸化多糖であり、アルカリホスファターゼ(ALP)は、軟骨細胞の石灰化に関与する重要な酵素です。
近年、CSがさまざまな細胞の分化を調節することが報告されており、本研究では、軟骨形成細胞株ATDC5のALP活性および石灰化に対するCSの効果を検討し、非硫酸化および酸性多糖であるヒアルロン酸(HA)と比較しました。
その結果、CSおよびHAは、ATDC5細胞増殖に影響を与えることなくALP活性を有意に抑制しました。しかし、Alp mRNA発現レベルはCSの影響を受けませんでした。CSの抑制作用は、コンドロイチナーゼABC(CSase)による前処理によって無効化されました。 また、ATDC5細胞の石灰化は、ALPの阻害剤であるL-ホモアルギニン(hArg)と同様にCSでも有意に抑制しました。
以上より、補充された高分子のCSはALPを直接阻害し、軟骨細胞が分化する石灰化への進行を防ぐことが認められました。

試験デザイン

試験材料

CS(分子量(MW)= 31,000)はサメ軟骨由来、およびHA(MW = 100,000)はニワトリ軟骨由来のものを使用しました(ゼリア新薬工業提供)。また、コンドロイチナーゼABC(CSase)は、Sigma-Aldrich 社から購入しました。 骨ALP阻害剤であるLホモアルギニン(hArg)は、東京化成工業株式会社から購入しました。
低分子量CSは、10 mg / mL CS水溶液およびCSase(終濃度5 mU)を0.25、0.5、0.75、1、2、4または24時間、37°Cでインキュベートして分解しました。

使用細胞と測定方法

軟骨形成細胞株であるATDC5は、理研セルバンクから入手しました。
ATDC5細胞増殖は、10%WST-1試薬により測定しました。Alp mRNAの発現はRT-PCR法にて測定しました。CSaseで分解されたCSは、1%アガロースゲル中の0.05%トルイジンブルーを使用して可視化しました。ATDC5細胞のALP活性は細胞を20%ホルマリンで固定した後、10 mMナフトールAS-BIリン酸(Sigma)を含む0.05 M 2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)(ナカライテスク)バッファー(pH 9.8)と1 mM Fast Red violet LB塩(Sigma-Aldrich)、37°Cで20分間インキュベートして染色しました。ATDC5細胞の石灰化はアリザリンレッド染色にて測定しました。添加するCSおよびHAの濃度は図1以降の試験はすべて1000μg/ mLの濃度で実施しました。

結果

ATDC5細胞の増殖およびALP活性に対するCSおよびHAの影響

CSおよびHAは、検討した最高濃度(1000μg/ mL)までATDC5細胞増殖に影響しませんでした。ATDC5細胞のALP活性に対するCSおよびHAの添加効果(4日間)は、CSとHAいずれも1〜100μg/ mLの濃度でALP活性に影響しませんでしたが、1000μg/ mLの濃度でどちらもALP活性を有意に抑制しました。
ALP活性に対するCSおよびHAの補充の長期効果を調査した結果、7日目と14日目にCSとHAはALP活性を有意に抑制しました。

Alp mRNAの発現に対するCSおよびHAの効果

培養されたATDC5細胞におけるAlp mRNAの発現に対するCSおよびHAの効果について検討しました。0〜14日間のCSまたはHAの添加の有無にかかわらず、すべてのグループのAlp mRNAの発現は時間とともに増加しましたが、コントロール細胞と比較した場合、CSおよびHAは発現を変化させませんでした。

ATDC5細胞のALP活性に対する低分子化されたCSの効果

CSaseで消化した低分子量CSを調製しATDC5細胞のALP活性に対するCSの分子サイズの影響を調べました。CSase処理時間に応じて、CSは徐々により小さな分子に分解されました。 4時間以上のCSase処理後、染色は現れませんでした。適度に消化されたCSによる4日間の処理は、インタクトなCSと同様にATDC5細胞のALP活性を有意に抑制しました。対照的に、完全に消化されたCSはALP活性に影響しませんでした。

ATDC5細胞のALP阻害と石灰化作用の関係

最後に、ATDC5細胞の石灰化作用に対するALP阻害の効果を調べました。 ALP阻害剤であるhArgは、CSおよびHAと同様にATDC5細胞のALP活性を有意に抑制しました。
インシュリン-トランスフェリン-亜セレン酸ナトリウム(ITS)で培養したコントロール細胞は、アリザリンレッド(AR)で染色された顕著な結節を形成しました。CS、HAおよびhArgの添加は、対照と比較してATDC5細胞の石灰化を有意に抑制しました。

おすすめ記事