コンドロイチン硫酸二糖はin vitroで正常なヒト皮膚線維芽細胞の細胞外マトリックス関連遺伝子とタンパク質発現を増強する

概要

コンドロイチン硫酸(CS)の生理学的効果は、その硫酸化の程度に依存します。
この研究は、正常なヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)における高度に硫酸化されたCSの異なる分子量における効果を検討しました。
その結果、二糖CSは、細胞外マトリックスに必要な遺伝子(I型コラーゲンアルファI(COL1A1)、デコリン(DCN)、エラスチン(ELN)、リシルオキシダーゼ(LOX)、SMAD2およびSMAD3)の発現を有意に増加させました。さらに、コラーゲンとエラスチンがタンパク質レベルで増加することを確認しました。対照的に、高分子および低分子CSには有意な効果はありませんでした。
以上より、高度に硫酸化された二糖CSは、細胞外マトリックス関連遺伝子およびタンパク質の発現を増加させたとことから、皮膚のハリと弾力性を高める可能性があります。

試験デザイン

試験材料

高分子CS(平均分子量(MW)=47,000 Da、硫酸基含有量:38.57%)および低分子CS(MW=3,700 Da、硫酸基含有量:38.74%)はマルホ株式会社から入手しました。高硫酸化二糖CS(ΔUA-2S→GalNAc-4S-6S Na2、MW=707 Da)は、Dextra Laboratories社から購入しました。
MTTはSigma Chemical 社から、TMB溶液はR&D Systems社から入手しました。他の試薬は和光純薬工業株式会社から購入しました。

使用細胞と測定方法

NHDFはクラボウ社から購入し、10%FBSを含むDMEMを用い、5%CO2、37℃で培養しました。NHDFは二糖CS、低分子CS、高分子CSで処理し、細胞生存率をMTTアッセイにより測定しました。また、培養したNHDFから総RNAを抽出し、さまざまな遺伝子(詳細は後記)の発現をRT-PCRにより、トータルRNAの量と質を測定しました。
I型コラーゲン含量およびエラスチンタンパク質発現レベルは、ELISAおよびウエスタンブロッティングにより評価しました。

結果および考察

NHDFに対して、異なる分子量の高度に硫酸化されたCSの効果を検討するため、最初に、細胞生存率に対するCS処理の効果を24時間まで測定したところ、二糖CSの全濃度、または0.3μg/ mLの低分子または高分子CSでは、細胞毒性は観察されませんでした。
次に、異なる分子量のCSでNHDFを処理した12時間後に細胞外マトリックス関連タンパク質の遺伝子発現レベルを測定しました。
コラーゲン線維の形成に必要なタンパク質であるI型コラーゲンは、皮膚に豊富にあります。測定した6種類のタンパク質のうち、DCNはコラーゲン線維を安定させるために必要であり、ELNは皮膚の弾性繊維の主成分です。LOXは繊維の架橋に重要な役割を果たします。SMAD2とSMAD3はELNの生産に必要というように、6つのタンパク質はすべて皮膚の線維形成に重要になります。
その結果、二糖CSは、正常群と比較してCOL1A1、DCN、ELNおよびSMAD2の遺伝子発現レベルを有意に増加させ、LOXおよびSMAD3の発現レベルを増加させる傾向が認められました(0.05<p<0.1)。一方、高分子CSは遺伝子発現レベルに大きな影響を与えませんでした。
また、I型コラーゲン含量とELNタンパク質発現レベルを調べたところ、二糖CS処理群ではI型コラーゲン含量とELNタンパク質発現レベルが有意に高いことがわかりました。
以上より、硫酸化度の高い二糖CSは線維芽細胞に作用して、これらの遺伝子発現を増加させるとともに、I型コラーゲン含量とELNタンパク質量も増加させたことから、線維形成を促進する可能性があります。

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