変形性膝関節症に対するコンドロイチン硫酸ナトリウムの臨床効果

概要

変形性膝関節症に対するコンドロイチン硫酸の有効性を検討するため、1年間の無作為化二重盲検用量比較法を用いて調査しました。痛みを伴う変形性膝関節症の患者73人について、低用量または高用量の経口コンドロイチン硫酸で治療しました。
症状をルケーンズインデックス(LI)によって評価した結果、重度の症状を伴うサブグループ(LI≥8)では、高用量のコンドロイチン硫酸6か月および9か月の治療後、痛みが低用量群より早く改善されました。また、コンドロイチン硫酸は忍容性が良好でした。なお、軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)およびヒアルロン酸(HA)の血清レベルに用量関連の影響は見つかりませんでした。
以上より、コンドロイチン硫酸は、変形性膝関節症の疼痛管理に有用であると結論付けられました。

試験デザイン

  • 藤田保健衛生大学病院整形外科及び名古屋市内の提携病院に来院した変形性膝関節症(OA)患者73名(KLグレード2または3、疼痛VASスコアが30mm以上)に、コンドロイチン硫酸エステルナトリウム(CS)を低用量(260mg/day, 32名)または高用量(1,560mg/day, 41名)を経口投与する二重盲検用量比較試験を実施しました。
    対象者は、服用以外は日常と同じ生活を行いました。
  • 初診時、3ヵ月、6ヵ月、9ヵ月及び12ヵ月後に以下の検査を実施して評価しました。
    ①LI(Lequesne’s index:ルケーンズインデックス)による痛みの問診評価
    ②疼痛VAS(Visual Analog Scale)スコアによる痛みの自己評価
    ③12か月後の血清中COMP(Cartilage oligomeric matrix protein:軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質濃度)およびHA(hyaluronic acid concentration:ヒアルロン酸濃度)測定
  • LIまたはVAS結果の解析は、開始時に対する各時点での検定は、Mann-Whitney U-testを用いました。各時点での低用量および高用量間の比較はTukey-Kramer testで実施しました。
  • COMPおよびHA結果の解析は、two-wayまたはrepeated-measures ANOVAで実施しました。

結果

試験前の両群に年齢、体重および血液中各パラメーターに有意な差は見られませんでした。
試験後、LIの合計点が8以上(痛みを強く感じている)の群と、8未満(痛みを強く感じていない)の群とに分けて解析した結果、前者の群において、CSの低用量と高用量の服用者間で差が認められました(図1)。特に痛み(LI-Ⅰ)において服用後6ヵ月間から9ヵ月で2群間に有意な差(♰p<0.05)が認められましたが、LI-ⅡおよびLI-Ⅲには有意な差は認められませんでした。

図1 試験期間中におけるCS服用量の違いによる痛み評価(LI-Ⅰ)の推移
   低用量群:N=18, 高用量群: N=23

このLI-Ⅰをさらに、各質問ごとに詳しく見ると(表1)、I-Cを除いては9ヵ月に有意な改善が認められ、歩行時の痛みについては6ヵ月で既に有意な改善が認められていました。
VAS法による評価もほぼ同様でしたが、血清中COMPおよびHAには影響は見られませんでした。

表1 LI≥8群におけるCS服用量の違いによる痛み改善度
  (LI-Ⅰの合計および各設問の得点)

これらの結果は、CSの継続服用により、夜間安静時の痛み、起床時の関節のこわばり、歩行時の痛み、腕の支えなしで椅子から立ち上がる時の痛みという関節に負荷のかかる痛みが改善され、高用量群で、低用量群より早い改善が認められることを示しています。
以上より、CSによる経口治療は忍容性があり、OA患者の疼痛緩和には1,560 mg /日が260 mg /日よりも効果的であることを示しました。なお、CSに起因する副作用はありませんでした。

用語の解説

Kellgren-Lawrence(KL)グレード

KLグレードとは、OAの進行度をX線画像の所見から0(ゼロ)~4の5段階に評価するものです。
 グレード 0:正常
      1:関節裂隙狭小のないわずかの骨辣形成または軟骨下骨硬化
      2:関節裂隙狭小(25%以下)あるも骨変化なし
      3:関節裂隙狭小(50~75%)と骨辣形成、骨硬化像
      4:骨変化が著しく、関節裂隙狭小(75%以上)を伴う

疼痛VASスコア

疼痛VAS(Visual Analog Scale)スコアとは、10cmの直線(スケール)上に、今まで痛みの最大値(スケール右端)=10cm、痛みなし=0cmとして、現在の痛みがどの位置にあるかを判断してマークした距離を比較するものです。

LI(ルケーンズインデックス)

LIとは、以下に示す質問に対する自己評価を点数化したものです。
I、II、IIIの3つの群があり、合計最大24点になります。
I群は、痛み・不快感に関して5つの設問で、点数の合計は最大8点です。
II群は、歩行に関する2つの設問で、点数の合計は最大8点、
III群は、日常生活に関する4つの設問で、点数の合計は最大8点になります。

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